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単一分子を用いた少数光子コヒーレント非線形光学
Nature Photonics 10, 7 doi: 10.1038/nphoton.2016.63
1800年代に炎を用いて線形分光の先駆的実験が行われたが、非線形光学測定は、20世紀にレーザーが利用できるようになるまで待たなければならなかった。物質の非線形断面積は非常に小さいので、通常は巨視的なバルク試料とパルスレーザーが用いられる。個々のナノ粒子や原子を数百万個含む小さな原子集団からコヒーレント非線形信号を生成する研究に多くの努力が注がれてきた。また、単一半導体量子ドットに関する実験も報告されたが、得られた信号は非常に小さかった。今回我々は、連続波シングルパス照射の下で単一分子のコヒーレント非線形分光を行い、約10個のポンプ光子でレーザービームをスイッチングしたことを報告する。今回の強集光時の急峻な分子遷移と高効率分子–光子結合は、少数のポンプ光子による光スイッチングを可能にするため、量子工学への応用に有望である。