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精密に調整した電子ビームによる最高75次のエコー式高調波発生
Nature Photonics 10, 8 doi: 10.1038/nphoton.2016.101
レーザーが発明され、続いて周波数逓倍が実証されて以来、さらに短い波長でのコヒーレント放射の生成は、積年の課題であった。現在のX線自由電子レーザー(FEL)は、相対論的電子を利用して、数フェムト秒時間スケールの強度の高いX線パルスを生成する。しかし、この増幅のシードとなるショット雑音によって、時間コヒーレンスが限定された雑音の多いスペクトルのパルスが生成される。安定な変換限界パルスを生成するため、エコー式高調波発生(echo-enabled harmonic generation; EEHG)と呼ばれるシーディング方式が提案されている。これは、よく知られたエコー現象の極めて非線形な位相混合を利用して、従来型のレーザーを用いて電子ビームにコヒーレントな高調波密度変調を生成する。今回我々は、2400 nmのレーザーから32 nmの光を生成する、最高で75次の高調波のEEHGを実証したことを報告する。さらに我々は、個々の高調波の振幅は、位相混合の簡単な調整によって制御されることも実証している。今回の結果は、新しい科学のための将来のX線FELにおいてコヒーレントなスペクトルの正確な制御を実現する、レーザーに基づく操作が可能であることを示している。