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キセノン原子の強場イオン化における電子スピン偏極
Nature Photonics 10, 8 doi: 10.1038/nphoton.2016.109
電子の基本特性として、スピンは、例えば磁性を生じさせるなど、固体から分子や原子までさまざまな物質の電子構造において決定的な役割を果たしている。しかし、その重要性にもかかわらず、原子が強い超短レーザーパルスと相互作用する間に解放される電子のスピンダイナミクスは、まだ実験的に調べられていない。今回我々は、キセノン原子の強場イオン化によって電子スピン分極を実験的に検出したことを報告する。この結果は、理論解析によって裏付けられている。我々は、スピン分極が最大30%に達し、その符号が電子エネルギーとともに変化することを見いだした。今回の結果は、強い場の物理学にスピンの新たな側面を開くものである。今回の結果によって、超高速の時間スケールで物質の磁気特性を調べることから、サブフェムト秒の時間分解能とサブオングストロームの空間分解能でキラル分子系を検証することまで、さまざまに応用できるサブフェムト秒スピン分極電子パルスを生成する道が開かれる。