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プログラム可能なナノフォトニックプロセッサーでの量子輸送シミュレーション

Nature Photonics 11, 7 doi: 10.1038/nphoton.2017.95

環境の雑音と不規則さは、固体系や生体系を含む、複雑な媒質中での量子的な粒子と波の輸送に極めて重要な役割を果たす。この2つの効果はそれぞれが輸送を減らすことが分かっているが、最近の研究で、パラメーター空間の限られた領域では、雑音によって生じる位相緩和が局在効果を和らげ、量子輸送の強化につながることがあると予測されている。輸送問題の全てのパラメーターに対して、損失が低く、忠実度が高い制御を行う大規模システムを開発することを中心的な目標として、フォトニック集積回路は、こうした効果を調べる有望なプラットフォームになる。今回我々は、ナノフォトニックプロセッサーを使って、量子輸送における不規則さの役割を完全にマッピングしている。このナノプロセッサーは、マイクロ秒の時間スケールでプログラム可能な汎用ビームスプリッター88個を網状に並べたものである。我々は6万4400回の実験を行い、静的に不規則化された離散時間系において、環境によって促進された量子輸送や「量子ゴルディロックス」状況など、異なる輸送状況を観測した。このナノフォトニックプロセッサーは、損失が低く忠実度が高いプログラム可能な変換を行うため、多ボソン量子シミュレーション実験の有望なプラットフォームになる。

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