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高次多光子トムソン散乱

Nature Photonics 11, 8 doi: 10.1038/nphoton.2017.100

電子光子散乱すなわちトムソン散乱は、電気力学における最も基本的な機構の1つであり、実験室の高エネルギーX線源や天体物理学的な高エネルギーX線源の基礎となっている。約100年に及ぶ研究の末、つい最近、実験室で非線形領域のトムソン散乱の実験的研究を行うのに十分な強さの電磁場強度が得られるようになった。我々は、高出力レーザーとレーザー駆動電子加速器を利用して、1個の電子によって500個以上の近赤外レーザー光子が散乱されて1個のX線光子を生成する高次多光子散乱を初めて測定した。電子の運動と散乱された光子の両方が、場の強度に非線形に依存することが見いだされた。観測された散乱X線の角度分布から、超高強度レーザー光と自由電子との相互作用時にin situで絶対強度を独立に測定できる。さらに、この実験ではアト秒持続時間の硬X線パルスを生成できる可能性があるので、原子核の超高速ダイナミクスの研究が可能になりうる。

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