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全光アト秒干渉法による電子の波動関数のプロービング
Nature Photonics 13, 1 doi: 10.1038/s41566-018-0303-4
光電子分光法では、イオン化によって生じた電子の波動関数が、光イオン化ダイナミクスに関する情報だけでなく、束縛軌道の構造やイオンポテンシャルに関する情報を担っている。しかし、その量子位相情報の回復は長年の課題であった。今回我々は、アト秒パルス生成において光イオン化の時間反転過程(光再結合)を測定することによって、電子位相回復問題を光学的な問題に移し替えた。我々は、2つの独立した位相同期アト秒光源の全光干渉法を実証している。この測定法によって、ヘリウムやネオンなどの単純な量子系における電子散乱に伴う位相シフトの広いエネルギー範囲にわたる直接測定が可能になった。さらに、アト秒パルス生成の高強度場性によって、単一散乱角を通してアルゴンにおけるクーパー極小付近の双極子位相が分解される。今回の方法を用いることで、高強度レーザー場の影響下での共鳴による電子相関のプロービングに加えて、分子系における複雑な軌道位相のプロービングが可能になるかもしれない。