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シリコンフォトニック集積回路向けのひずみエンジニアリングによる高応答度MoTe2光検出器
Nature Photonics 14, 9 doi: 10.1038/s41566-020-0647-4
集積フォトニクスでは、1550 nmなどの特定波長が望ましい。このスペクトル領域では、伝送損失が低く、光学利得を得やすいからである。チップベースの光検出器用として、二次元材料には、静電力による調整可能性や強い光物質相互作用など、科学的・技術的に適切な特性がある。しかし、二次元遷移金属ジカルコゲニド材料を用いた通信Cバンドの高効率光検出器は、そうした材料の光学バンドギャップが大きいため、実現されていない。今回我々は、シリコンフォトニクスにおいて1550 nmで動作し、強い光応答(応答度0.5 A W−1)を特徴とするMoTe2系光検出器を実証する。この応答度は、MoTe2二次元材料のひずみエンジニアリングによって可能になった。平坦化されていない導波路構造は0.2 eVのバンドギャップ変調を示すため、ひずみがなければ光学不活性な媒質において、大きな光応答が生じる。ギャップレスバンド構造に依存するグラフェン系光検出器とは異なり、この光検出器では暗電流が約100倍低下しており、90 pW Hz–0.5という効率の良い雑音等価電力が可能になった。こうしたひずみエンジニアリングによる集積光検出器は、集積オプトエレクトロニクスシステムに新たな機会をもたらす。