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高出力可搬式テラヘルツレーザーシステム
Nature Photonics 15, 1 doi: 10.1038/s41566-020-00707-5
テラヘルツ(THz)周波数は、強力な小型光源が不足していることが主な原因となって、電磁スペクトルの中で最も活用が進んでいない領域の1つとなっている。THz量子カスケードレーザー(QCL)の発明は、半導体エレクトロニクス光源とフォトニクス光源の間のいわゆる「THzギャップ」を埋める大きなブレークスルーであった。しかしこの技術は、冷却の要求が厳しいために、実験室環境に限定されてきた。可搬式の高出力THzレーザーシステムは、医用イメージング、通信、品質管理、セキュリティー、生化学への応用に質的影響を及ぼすと思われる。今回我々は、クリーンな三準位系を実現する設計戦略を採用することによって、最高動作温度250 KのTHz QCL(約4 THz)を開発した。動作温度が高くなったことによって、可搬式THzシステムで、室温THzカメラによる実時間イメージングや室温検出器による高速スペクトル測定が可能になる。