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MR-TADFを用いる有機発光体におけるホスト–ゲスト相互作用の役割
Nature Photonics 15, 10 doi: 10.1038/s41566-021-00870-3
多重共鳴誘起熱活性化遅延蛍光(MR-TADF)物質を用いる有機発光体の研究は、効率の良い深青色発光の可能性があるため、現在大きな注目を集めている。しかし、多くのMR-TADF物質は溶液中でTADF挙動を示さず、特定の純固体としてのみ示すので、TADFの起源と機構はよくわかっていない。本論文では、よく知られたMR-TADF物質であるDABNA-1を、他の新しいMR物質である9H-キノリノ[3,2,1-kl]フェノチアジン-9-オン(QPO)および 9H-キノリノ-[3,2,1-kl]-フェノチアジン-9-オン5,5-ジオキシド(QP3O)とともに調べることによって、TADFの起源に関する新たな知見を得た。ある物質系においてMRのコンセプトを裏付けることができても、適切なホスト物質によってTADFを増強するエキシプレックスのようなホスト–発光体相互作用が可能にならない限り、順方向と逆方向の両者の項間交差の効率の低さによってTADFが禁じられる。このTADF増強機構は、フォトルミネッセンス測定においてTADFが起こらないが熱的に到達可能なS1–T1エネルギーギャップを持つあらゆる蛍光色素に一般化でき、高性能有機発光ダイオードへの道を開く。