磁場フリー窒化シリコン集積光アイソレーター
Nature Photonics 15, 11 doi: 10.1038/s41566-021-00882-z
集積フォトニクスによって、フォトニック集積回路(PIC)を用いた信号の合成、変調、変換が可能になる。多くの材料が開発されており、なかでも窒化シリコン(Si3N4)が、特に非線形フォトニクス向けの有力なプラットフォームとして浮上している。低損失Si3N4 PICは、周波数コム生成、狭線幅レーザー、マイクロ波フォトニクス、フォトニックコンピューティングネットワークに広く用いられている。しかし、Si3N4集積フォトニクスについて実証されたすべての機能の中で、アイソレーターやサーキュレーターなどの光非相反デバイスは実現されていない。従来、そうしたデバイスは、外部磁場下での磁気光学材料のファラデー効果に基づいて実現されている。しかし、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)に適合せず、大型の外部磁石を必要とする磁気光学材料を集積することは困難であった。今回我々は、低損失Si3N4 PIC上にモノリシックに集積した窒化アルミニウム(AlN)圧電変調器に基づく磁場フリーの光アイソレーターを実証している。回転位相で駆動される3つのAlNバルク音響波共振器を用いたSi3N4マイクロリング共振器の時空間変調によって、伝送の相反性が破られる。この設計は、1対の強結合光モードのうちの一方向のみに間接バンド間遷移を可能にする有効回転音響波を生成する。3つのアクチュエーターに300 mWの総高周波電力を印加した条件の下で、最大10 dBのアイソレーションが達成され、0.1 dBの最小挿入損失が得られている。また、光共振線幅によってアイソレーション帯域幅が決定され、700 MHzという値が得られている。アイソレーションは、光入力電力の約30 dBのダイナミックレンジにわたって一定のままであり、優れた光線形性を示している。今回の磁場フリーの電気駆動型集積線形光アイソレーターは、集積レーザーの主要構成要素や超伝導回路の光インターフェースとなる可能性がある。