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3.5 keVから14.6 keVの範囲をカバーする高輝度自己シード型X線自由電子レーザー
Nature Photonics 15, 6 doi: 10.1038/s41566-021-00777-z
自己シード型X線自由電子レーザー(XFEL)は、硬X線領域の高輝度完全コヒーレント自由電子レーザー(FEL)光源を実現する有望な方法であるが、縦コヒーレンスの実現が困難であることが長年の問題であった。今回我々は、浦項加速器研究所のXFELにおいて、9.7 keVにおけるピーク輝度が3.2 × 1035 photons s−1 mm−2 mrad−2 0.1% bandwidth (BW)–1の硬X線自己シード型XFELを実証している。帯域幅(0.19 eV)は、自己増幅自発放射(SASE)の約70分の1でフーリエ変換限界に近く、ピークスペクトル輝度は40倍であり、自己シーディングの安定性が大幅に向上し、ペデスタル効果が著しく抑制されている。我々は、光子エネルギー3.5 keV(最低)と14.6 keV(最高)において、9.7 keV自己シーディングと同じ安定性を示す優れた自己シーディング性能を達成できる可能性がある。14.6 keVシーディングによるFELの帯域幅は0.32 eV、ピーク輝度は1.3 × 1035 photons s−1 mm−1 mrad−1 0.1%BW−1であった。我々は、より高い再現性とよりクリーンなスペクトルを示すシード型FELパルスを用いることで、SASEモードを用いて収集したデータと比べてより質の高いシリアルフェムト秒結晶構造解析データが得られることを示す。