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リモートスピンフィルタリングによる光スピントロニクス半導体ナノ構造における室温で90%を超える電子スピン偏極率
Nature Photonics 15, 6 doi: 10.1038/s41566-021-00786-y
半導体スピントロニクスだけの強みは、スピンベースの情報処理/記憶と光子ベースの情報伝送/通信の融合を可能にする光スピントロニクスに向けて将来性が見込まれることである。残念ながら、半導体において室温でほぼ完全にスピン偏極した電荷キャリアを生成できなかったため、これまで進歩が著しく妨げられていた。今回我々は、半導体のみからなる非磁性ナノ構造において、磁場を印加せずに室温で90%を超える伝導電子スピン偏極の生成に成功し、最高で110℃という高温でもスピン偏極が維持されることを示す。これは、トンネル結合した隣接GaNAsスピンフィルターによるInAs量子ドット電子のリモートスピンフィルタリングによって達成された。さらに我々は、量子ドットの電子スピンを、隣接スピンフィルターにおけるスピン制御によってリモート操作でき、これによって量子メモリーのリモートスピン符号化と書き込みや、スピン–光子インターフェースのリモートスピン制御への道が開かれることを示している。今回の研究は、一般的な半導体ナノ構造に光スピントロニクス機能を実装できる可能性を実証するものである。