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スズ系ペロブスカイトナノ結晶における遅いキャリア緩和
Nature Photonics 15, 9 doi: 10.1038/s41566-021-00847-2
半導体における太陽エネルギーの変換効率は、ホットキャリア緩和過程が非常に速いことによって根本的に制限されており、エネルギーハーベスティングを改善するには、この過程を遅くすることが不可欠である。今回我々は、過渡吸収分光法によって観測されたように、ナノ結晶のサイズが小さくなると、量子閉じ込め効果によって連続バンド構造から別々のエネルギー状態へ変化するホルムアミジニウムヨウ化スズ(FASnI3)ナノ結晶について報告する。別々のエネルギー準位の出現によって、低い注入キャリア密度(ナノ粒子1個につきキャリア対1つ未満)において、ホットキャリアの緩和が2桁遅くなる。FASnI3ナノ結晶において観測されたバンド端における基底状態ブリーチの立ち上がり時間は、ハロゲン化鉛ペロブスカイトのバルクやナノ結晶より2桁遅い。これは、フォノンボトルネック効果に起因すると我々は考えている。今回の結果は、ショックレー・クワイサーの限界を超えて動作する高効率光起電力デバイスへの応用に、鉛フリーペロブスカイトナノ結晶が有望であることを浮き彫りにしている。