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ファンデルワールスヘテロ構造における双極子反発相互作用によって駆動される励起子輸送
Nature Photonics 16, 1 doi: 10.1038/s41566-021-00908-6
双極子ボース粒子気体は、量子領域においてその多体物理が興味深いため、現在集中的な研究の的になっている。リュードベリ原子から、GaAs二重量子井戸や、遷移金属ジカルコゲイドからなるファンデルワールスヘテロ構造まで、幅広く実験が行われている。量子気体は非常に希薄であるが、粒子間の相互作用は、ボース・アインシュタイン凝縮や高温超流動などのエキゾチックな多体現象につながる可能性がある。今回我々は、希薄領域における層間励起子ダイナミクスに双極子反発相互作用が及ぼす影響について報告する。空間時間分解フォトルミネッセンスイメージングを用いることによって、励起子輸送のダイナミクスを観測し、励起子移動度の直接推定が可能になった。相互作用の存在が、励起子の拡散輸送を大きく変化させ、ドリフト力の源として効果的に働くとともに、拡散係数を1桁増加させる。双極子反発相互作用と層間励起子の電気的制御を組み合わせることによって、励起子デバイスに魅力的な新しい展望が開かれる。