フォトニック結晶マイクロリングにおける高Qスローライトとその局在化
Nature Photonics 16, 1 doi: 10.1038/s41566-021-00912-w
今回我々は、フォトニック結晶(PhC)の概念とウィスパリングギャラリーモード(WGM)の概念を融合させた、内歯車に似たフォトニック結晶リング共振器について報告する。この「マイクロギヤ」フォトニック結晶リング(MPhCR)は、マイクロリング共振器の内側境界に周期的変調を加えて作製することで、PhC共振器に見られるような大きなバンドギャップを開く一方で、WGM共振器に見られるようなリングの円対称性外側境界と高い光学Q値を維持する。MPhCRは、特定のWGMをターゲットにして、最高で数十自由スペクトル領域の大きなPhCバンドギャップを開き、モードスペクトルを圧縮する一方で、WGMモードの高Q値、角運動量、導波路結合特性を維持している。特に我々は、誘電体バンド端近傍で、Q = (1.1 ± 0.1) × 106を維持しながら、従来のマイクロリングモードと比較して群速度が10分の1に低下したモードを観測した。このQ値は、スローライトデバイスにおけるこれまでの記録の約50倍である。また我々は、出発点としてスローライト設計を用いて、WGMをフォトニック結晶欠陥モードに局在化でき、最高で(5.6 ± 0.1) × 105の高Q値を維持しながら、従来のWGMと比較してモード体積を10分の1以下に縮小できることも実証した。重要なのは、詳細な電磁設計を必要とせずに、この追加的なフォトニック結晶欠陥局在化を実現できることである。さらに、WGMは歴史的実績があるため、共振周波数と導波路結合の制御が容易である。MPhCRは、PhCを用いて群速度や局在化などのWGMの基本特性を強く変化させ、センシング/計測、非線形光学、共振器量子電磁力学などの幅広いフォトニクス応用向けにエキサイティングなプラットフォームをもたらす。