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半導体ナノへリックスからの第三高調波ミー散乱
Nature Photonics 16, 2 doi: 10.1038/s41566-021-00916-6
キラル分光法によって、分子やナノ粒子の構造解析が可能になるが、大規模化学ライブラリーの作成にそぐわない量の試料が必要である。キラル化合物の高スループット合成/分析ステーションで必要な微量(< 1 μl)試料のキラリティーを評価するには、新しい光学ツールが必要である。今回我々は、そうした機能を可能にする新しいフォトニック効果である第三高調波ミー散乱光学活性が、極微量(<< 1 μl)のCdTeナノ構造へリックスの懸濁液で観測されたことを実験的に示す。CdTeヘリックスに波長1065 nm、1095 nm、1125 nmのレーザービームを照射すると第三高調波ミー散乱が記録され、その強度は側方向よりも前方向で約10倍高かった。第三高調波の楕円率は3°と高く、我々はこの効果をキラルとアキラルの有効非線形感受率テンソル成分の干渉によるものと考えている。半導体ヘリックス表面における第三高調波ミー散乱は、10−5 μlという極微量試料の高速高スループット・キラル光学特性評価への道を開く。