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無秩序分子媒質の硬X線らせん二色性

Nature Photonics 16, 8 doi: 10.1038/s41566-022-01022-x

キラリティーは、鏡像対称性がない分子の構造的特性であり、生命科学から材料科学までさまざまな分野において大きな影響を及ぼしている。キラリティーに敏感な円二色性などの分光法は、アキラルなバックグラウンドにおける信号の寄与が小さい。光の軌道角運動量(OAM)に基づくらせん二色性は、分子のキラリティーを探る新しい手法をもたらすが、無秩序試料では実証されていない。さらに、光ドメインにおいて、OAMを光子からオングストロームサイズの軌道に局在する電子に移行する必要性があるという課題がある。今回我々は、OAMを誘起できるらせん型フレネルゾーンプレートと硬X線を用いることによって、この課題を克服している。我々は、分子錯体[Fe(4,4′-diMebpy)3]2+のエナンチオピュアな塩の無秩序粉末試料について、OAMを運ぶビームを用いた鉄のK端(7.1 keV)におけるらせん二色性スペクトルを提示する。トポロジカルチャージ1および3のOAMビームの場合、らせん二色性スペクトルの非対称率は1~5%の範囲内である。今回の結果によって、分子キラリティーや、分子キラリティーと光のOAMの相互作用の研究に向けて、新たな機会が開かれる。

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