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極めて安定した近赤外ペロブスカイト発光ダイオード
Nature Photonics 16, 9 doi: 10.1038/s41566-022-01046-3
ペロブスカイト発光ダイオードは、新しい光源技術である。しかし、ペロブスカイト太陽 電池と同様に、動作安定性に乏しいことが商業的応用の障害になっている。今回我々は、 極めて安定した効率の高い近赤外(約800 nm)ペロブスカイト発光ダイオードを実証する 。この発光ダイオードは、初期放射輝度(電流密度)が3.7 W sr<sup>−1</sup> m<sup>−2</sup>(約5.0 mA cm<sup>−2</sup>)の場合に1万1539時間(約1.3年)、初期放 射輝度(電流密度)が2.1 W sr<sup>−1</sup> m<sup>−2</sup>(約3.2 mA cm<sup>−2</sup>)の場合に3万2675時間(約3.7年)という過去最長の動作寿命 (<i>T</i><sub>50</sub>、外挿)を示し、放射輝度がそれより低い場合はさらに寿命が 長くなると予想されている。この安定性のカギは、ペロブスカイト粒界のカチオンやアニ オンと相互作用する双極性分子安定化剤を導入したことである。これによって、電場印加 時のイオンマイグレーションが抑制され、α-FAPbI<sub>3</sub>ペロブスカイトの相転移 や分解を仲介するヨウ化鉛の形成が妨げられる。今回の結果は、「ハロゲン化物ペロブス カイトデバイスは本質的に不安定なのかもしれない」という重大な懸念を排除し、工業的 応用への道を開く。