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キルヒホッフの熱放射の法則の破れの直接観測
Nature Photonics 17, 10 doi: 10.1038/s41566-023-01261-6
熱放射(有限温度の全ての物体が電磁エネルギーを放射する過程)は、相反性に従い、特定の波長と角度チャネルについて物体が吸収する放射量と放出する放射量は等しいと、一般的に考えられている。この等価性は、1860年にグスタフ・キルヒホッフによって定式化され、「キルヒホッフの熱放射の法則」と呼ばれており、長年にわたって、放出される放射を制御する設計の指針となってきた。キルヒホッフの法則の制約を取り除くことによって、多くの熱放射体の応用や設計が開放される。吸収率と放射率の関係の分離を利用できれば、太陽エネルギーハーベスティングシステムにおける太陽への再放射損失の低減から、放射カモフラージュまで、さまざまな新しい機能を実現できる。今回我々は、磁気光学材料と結合した導波モード共鳴をサポートするフォトニック設計について、方向性スペクトル放射率と方向性スペクトル吸収率の間の非等価性を直接測定したことを報告する。この非等価性は、磁気光学材料InAsにおける対角誘電率テンソルを非対角テンソルに変化させる面内磁場印可の下で生じ、結果として、特定角度における放射率の増加という磁気的調整が、同じ角度における吸収率の減少と相関する反対称関係につながった。