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光マイクロ共振器を用いた単一粒子光音響振動分光法
Nature Photonics 17, 11 doi: 10.1038/s41566-023-01264-3
振動分光法は、固有振動から物体の種、成分、形態を導き出す普遍的な技術である。しかし、大半の生体細胞などのメゾスコピック粒子の固有振動は、既存の技術ではまだ知ることができない。こうした粒子は、メガヘルツからギガヘルツの速さでかすかに振動すると予想されており、現在の光学分光法や圧電分光法では非現実的な感度と分解能が必要である。今回我々は、光マイクロ共振器を用いて単一メゾスコピック粒子の固有振動の実時間測定を実証し、振動分光法の範囲を異なるスペクトル窓に拡大した。概念的には、粒子のさまざまな振動モードが、レーザーパルスの吸収によって光音響的に励起され、高Q値の光共振と音響学的に結合されて、極めて高い感度で読み出される。実験的には、この方式は、成分、サイズ、内部構造が異なるメゾスコピック粒子を測定することによって検証され、50 dBというかつてない信号対雑音比と1 GHzを超える検出帯域幅が示された。さらに今回の技術は、微生物の種や生命状態の単細胞レベルの生体力学的フィンガープリンティングに適用される。今回の研究は、振動自由度で単一粒子の機械的特性を調べる新たな道を開くとともに、光音響センシングやイメージング、共振器オプトメカニクスやバイオメカニクスに応用できる可能性がある。