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メガヘルツ繰り返し率のカスケード硬X線自己シード型自由電子レーザー
Nature Photonics 17, 11 doi: 10.1038/s41566-023-01305-x
サブナノ秒からフェムト秒の時間領域における高分解能X線分光法には、超短X線パルスや、現在利用可能なものよりかなり大きいスペクトルX線フラックスが必要である。過去に、硬X線自己シード型(HXRSS)セットアップからのX線自由電子レーザー(XFEL)放射が実証されており、必要なピークフラックス特性が得られている。これまで、こうしたシステムは、高い平均フラックスを可能にする高い繰り返し率を実現できなかった。今回我々は、世界中で現在唯一稼働している高繰り返し率硬X線XFEL施設であるEuropean XFELに設置されたカスケードHXRSSシステムに関する結果を報告する。高繰り返し率とHXRSSの組み合わせによって、6~14 keVの光子エネルギー領域において、約1 mJ eV–1のピークスペクトル密度に相当する約1 eVの帯域幅で、10トレイン毎秒の速さで、ミリジュールレベルのパルスの生成が可能になり、各トレインには、メガヘルツ繰り返し率に達する数百パルスが含まれている。2.25 MHzの繰り返し率と6~7 keV領域の光子エネルギーにおいて、HXRSS結晶への熱負荷の影響を観測し評価したところ、熱負荷後のX線パルスのスペクトルが大幅に変化していた。我々は、今回のカスケード自己シード型スキームが、この悪影響を検出レベル未満に低減することを実証した。これによって、超高速X線分光法、散乱技術、イメージング技術を用いる幅広い科学分野において、エキサイティングな新しい可能性が開かれる。