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複雑媒質における空間的にインコヒーレントな光を用いた位相共役
Nature Photonics 17, 12 doi: 10.1038/s41566-023-01254-5
生体組織などの複雑媒質の深部における光の整形は、多くの研究分野に不可欠である。波面整形による散乱光のコヒーレント制御は、この課題への取り組みにおける大きな進歩につながったが、媒質の内部に物理的に近づくことなく大きな対象物や複数の対象物に対して光を制御することは、依然として困難である。今回我々は、空間的にインコヒーレントな光の位相共役方法を提示する。この方法によって、複数の対象物の位置からのインコヒーレント発光に基づく非侵襲的な光制御が可能になる。今回の方法では、スペックルパターンから互いにインコヒーレントな散乱場を取得することによって、隠れた発光源の散乱応答を評価している。我々は、デジタル位相共役を用いて散乱蛍光を時間反転することによって、個別の対象物や複数の対象物への集光を実験的に実証している。また我々は、透過固有チャネルを利用することによって、散乱媒質を通した大きな対象物への最大エネルギー輸送も実証している。これによって、インコヒーレントコントラスト機構を用いて複雑媒質中の光伝搬を制御する道が開かれる。