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軌道–運動量ロッキングに起因する、有機発光ダイオードにおける異常な円偏光発光

Nature Photonics 17, 2 doi: 10.1038/s41566-022-01113-9

キラル円偏光(CP)は、スピン情報の光通信から新しいディスプレイ技術やイメージング技術まで、多くのフォトニクス技術の中核となっている。従って、有機発光ダイオード(OLED)からの強い非対称性のCP発光を可能にするキラル発光材料の開発に多大な努力が注がれている。発光方向にかかわらず、活性層の分子のキラリティーによって、そうしたデバイスにおけるCP発光の優先的掌性が決まるという説が、広く受け入れられている。今回我々は、従来とは異なり、反対方向に伝搬するCP光が反対の掌性を示し、OLEDにおける電流を逆転させてもCP発光の掌性が切り替わることを見いだした。この方向依存性のCP発光は、裏面電極によって反射されたCP光が、一般的に測定非対称性を悪化させるという、CP-OLEDにおいて定着した問題を解決することによって、正味の偏光比を数桁向上させる。我々は、詳細な理論解析を通して、この異常なCP発光を、キラル材料における普遍的なトポロジカル電子特性、すなわち軌道–運動量ロッキングによるものとした。今回の研究は、新しいキロプトエレクトロニクスデバイスの設計への道を開くとともに、量子領域におけるキラル物質、トポロジカル電子、CP光の密接な関係を探るものである。

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