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光熱緩和局在化顕微鏡法による非蛍光分子の超解像イメージング
Nature Photonics 17, 4 doi: 10.1038/s41566-022-01143-3
近年、回折限界を超える光学イメージングが、多大なブレークスルーにつながっている。広く利用されている蛍光ベースの方法と比較すると、無標識イメージングによって、標識化の必要性と、それに伴う細胞毒性の潜在的問題が回避される。しかし、蛍光を用いない方法は、飽和効果や非線形性に頼ることが多いため、適用可能性が特定の分子に限定され、高いレーザーピーク出力を必要とする。今回我々は、こうした制約を克服する光熱緩和局在化(PEARL)顕微鏡法(photothermal relaxation localization microscopy)という無標識超解像法を開発した。PEARL顕微鏡法は、光熱顕微鏡法においてプローブビームの位置依存性変調から回折限界未満の特徴を抽出し、電子(E)吸収や振動(V)吸収などの一般的な吸収過程に基づくため特殊な吸収体を必要としない。我々は、生細胞の無標識・結合選択的E-PEARLイメージングとV-PEARLイメージングをそれぞれ280 nmと120 nmの分解能で実証するとともに、哺乳類細胞と酵母細胞における個々の脂肪滴とその分布のスペクトル的かつ空間的なイメージングを示している。我々は、PEARLが、非蛍光分子の超解像イメージングへの新しい道を開く可能性があり、生物学、医学、材料科学におけるエキサイティングな幅広い応用が期待されると考える。