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混合溶媒からのガンマ線分光用の低欠陥密度FACsPbBr3単結晶の高収率成長
Nature Photonics 17, 4 doi: 10.1038/s41566-023-01154-8
金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、室温ガンマ線スペクトル検出器用に有望な候補である。しかし、性能が既存の材料に匹敵する高品質単結晶を成長させることは困難である。今回我々は、溶液法を用いて低純度(98%)の前駆体からセンチメートルサイズのホルムアミニジウムセシウム臭化鉛(FACsPbBr3)単結晶を高収率で成長させたことを報告する。CsPbBr3にホルムアミニジウムを導入すると、成長温度から室温への冷却時の相転移がなくなるため、結晶の欠陥密度が低下する。混合溶媒を適用してCsPbBr3とFAPbBr3の溶解度勾配を合わせることで、0~1のFA:Cs比でFAPbBr3にセシウムを導入することに成功した。成長させたFACsPbBr3は、抵抗率が9.5 × 109 Ω cmと高く、正孔の移動度・寿命積が3.2 × 10−3 cm2 V−1、電子の移動度・寿命積が2.2 × 10−3 cm2 V−1とバランスが取れており、深いトラップの密度が5.6 × 1010 cm−3と記録的に低く、ガンマ線下で84%という高い電荷収集効率が得られた。FACsPbBr3スペクトル検出器は、662 keV の137Cs γ線で2.9%のエネルギー分解能を達成した。FACsPbBr3結晶の65%以上が優れたγ線スペクトル性能を示す。FACsPbBr3単結晶は、1000 Vまでの大きなバイアス下で非常に優れた安定性を示し、7カ月後のスペクトル性能に劣化が見られなかった。