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アクティブマトリックス・ディスプレイ向けの、全て熱蒸着で作製した高効率ペロブスカイト発光ダイオード
Nature Photonics 17, 5 doi: 10.1038/s41566-023-01177-1
最近、ペロブスカイト発光ダイオード(PeLED)は、次世代ディスプレイ向けに大きな可能性を示している。スケーラブルで十分確立された熱蒸着(有機発光ダイオードの工業生産に用いられる手法)でPeLEDを作製することによって、ペロブスカイト・ディスプレイの開発が加速されるはずである。しかし、ペロブスカイトの熱蒸着では、蒸着時の結晶成長が高速で制御できないため、欠陥密度の高い膜が形成される。結果として、蒸着したPeLEDの性能は、溶液プロセスで作製したPeLEDと比べて後れを取っている。今回我々は、電荷キャリアを閉じ込め、表面欠陥をパッシベートする一方で、ペロブスカイトの結晶粒径を小さくするルイス塩基添加剤を導入する三元同時蒸着戦略を開発した。このプロセスによって、高品質のペロブスカイトナノ結晶膜がin situで形成できるようになり、結晶性が改善され、フォトルミネッセンス量子収率が向上し、欠陥が抑制される。全て熱蒸着で作製したデバイスアーキテクチャーの緑色PeLEDでは、ピーク外部量子効率16.4%が達成された。さらに我々は、6.67インチ薄膜トランジスターバックプレーンの上に上面発光PeLEDを集積することによって、アクティブマトリックスPeLEDディスプレイを作製した。このディスプレイは、1080 × 2400の解像度と連続グレースケール情報で高画質の画像や映像を表示する。我々は、今回の研究結果によって、工業用ディスプレイ向けに、蒸着法で作製した高効率PeLEDの研究が促進されると予想する。