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超高速電子ダイナミクスにおける光子統計力
Nature Photonics 17, 6 doi: 10.1038/s41566-023-01209-w
高強度場物理やアト秒科学では強い光によって超高速電子ダイナミクスが誘起される。物質におけるそうした超高速電子ダイナミクスは、高調波生成などの現象の中核を成しており、こうした電子ダイナミクスは、持続時間がアト秒の極端紫外バーストの放出につながる。これまで、物質の超高速ダイナミクスは、純粋に駆動光の古典的ベクトルポテンシャルに起因すると理解されており、光の量子性の影響は無視されていた。今回我々は、高輝度(高強度)光に駆動される物質のダイナミクスが、量子雑音を通して駆動光の量子状態に大きく依存し、有効光子統計力(effective photon-statistics force)を誘起することを理論的に示す。我々は、そうした力を解析し制御する統一的枠組みを提示するために、高強度場近似理論を拡張し、非古典的な駆動光を説明している。今回の量子高強度場近似理論は、高調波生成において、実験的に実現可能な駆動光のスクイージングによって、数百アト秒のスケールで電子軌跡やアト秒パルスがシフトし整形されうることを示す。今回の研究では、非古典的な電磁場に頼ることによってアト秒分光法の新しい自由度を提示するとともに、より一般的には、アト秒科学と量子光学の間に直接的なつながりを導入している。