コヒーレントVCSELニューラルネットワークを用いた深層学習
Nature Photonics 17, 8 doi: 10.1038/s41566-023-01233-w
ディープ・ニューラル・ネットワーク(DNN)によって、情報処理分野が作り変えられつつある。こうしたDNNの急激な成長によって既存のコンピューターハードウェアに疑問が投げかけられるなかで、高いクロック速度、並列処理、低損失データ伝送でDNNタスクを処理するために光ニューラルネットワーク(ONN)が、最近浮上している。しかし、ONNの現在の課題は、電気光学変換効率が低いためエネルギー消費量が多く、大きなデバイス実装面積とチャネルクロストークに起因して計算密度が低く、インライン非線形性が不十分なため待ち時間が長いことである。今回我々は、これらの全ての課題を同時に克服する時間空間多重ONNシステムを実験的に実証する。我々は、電気光学変換効率が高く(π位相シフト電圧Vπ = 4 mVでシンボル当たり5アトジュール未満)、実装面積が小さい(デバイス当たり0.01 mm2未満)、大量生産されたマイクロメートルスケールの垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)アレイを用いたニューロン符号化を利用した。ホモダイン光電子増倍によって、量子雑音限界での行列演算と、瞬間応答を伴う検出ベースの光学非線形性が可能になった。今回のシステムは、三次元のニューラルコネクティビティーによって、演算(OP)当たり7フェムトジュールのエネルギー効率に到達可能で、計算密度が6 teraOP mm−2 s−1である。これは、最新式デジタルプロセッサーのそれぞれ100倍と20倍に上昇したことに相当する。近い将来の開発によって、これらの計量が2桁以上改善される可能性がある。今回の光電プロセッサーは、データセンターから分散型デバイスへと機械学習タスクを加速させる新たな道を開く。