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テルル化銀コロイド量子ドット赤外光検出器と画像センサー
Nature Photonics 18, 3 doi: 10.1038/s41566-023-01345-3
短波赤外(SWIR)領域(1~2 μm)で感度が高い光検出器は、機械視覚、自動運転、三次元撮像、夜間や悪天候時の撮像などの用途向けに大きな関心を呼んでいる。SWIR領域において現在利用可能な技術は、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)電子デバイスとモノリシックに集積されていない高コストのエピタキシャル半導体に頼っている。溶液プロセスで作製した量子ドットを用いれば、低コスト製造や、バックエンド工程におけるシリコン上での単純なモノリシック集積が可能になることで、この課題に取り組むことができる。これまでのところ、SWIR領域に達するコロイド量子ドット材料の大半は、硫化鉛化合物やテルル化水銀化合物に基づいており、毒性重金属が存在するため家電製品への展開には規制上の大きな懸念がある。今回我々は、環境に優しいテルル化銀量子ドットの新しい合成方法と高性能SWIR光検出器への応用について報告する。このコロイド量子ドット光検出器スタックは、特定有害物質使用制限指令(Restriction of Hazardous Substances)に準拠する材料を用いており、350 nmから1600 nmのスペクトル領域において感度が高い。室温における検出能は1012ジョーンズのオーダーで、3 dB帯域幅は0.1 MHzを上回り、リニアダイナミックレンジは118 dBを超えている。また我々は、溶液プロセスで作製した毒性重金属フリー材料に基づくモノリシック集積SWIR撮像装置も実現して、この技術の家電市場参入への道を開く。