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有機材料における制御可能な蓄光発光のための電荷トラッピング
Nature Photonics 18, 4 doi: 10.1038/s41566-024-01396-0
蓄光発光(励起停止後の無機材料や有機材料からの長寿命発光)は、オプトエレクトロニクスの分野で大きな注目を集めている。この数十年における大きな成果にもかかわらず、有機材料の性能は、数千年の歴史を持つ無機材料の性能に依然として後れをとっている。この主な原因は、有機材料に関わる機構の理解が限られていることである。今回我々は、有機ホスト・ゲスト材料におけるトラップ誘起蓄光発光(TIP)について報告する。この材料は、エネルギー準位エンジニアリングによって、0.11~0.56 eVの制御可能なトラップ深さと、波長507 nm~669 nmの調整可能な残光発光を示す。典型的なTN@TPBi膜におけるTIP現象は24時間以上持続し、さらなるエネルギーが室温で1週間以上貯蔵される。TIPにおけるトラップ深さは、ホスト分子とゲスト分子のラジカルアニオンの最低空分子軌道間のエネルギーギャップによっておそらく決まることが見いだされた。これは、密度汎関数理論計算とよく一致していた。また、TIPは電気的励起後も観測され、有機ホストの半導体的特徴を利用している可能性が示された。こうした結果から、金属フリー有機蓄光発光体を設計する基本原理が得られ、配送される医療物資の識別、半導体デバイス、撮像技術などの分野における応用が拡張される。