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超高速テラヘルツ走査型トンネル顕微鏡
Nature Photonics 7, 8 doi: 10.1038/nphoton.2013.151
励起現象のナノメートルスケールでの超高速観測は、励起現象をナノテクノロジーに応用するのに不可欠である。走査型トンネル顕微鏡(STM)とフェムト秒レーザーを組み合わせる取り組みから、多数の超高速STM技術が生まれた。しかし、ナノメートルの空間分解能を維持しつつ、STMの接合バイアス電圧を直接変化させる基本的能力は、10 ps程度に制限され、また、特殊なプローブや試料構造が必要だった。今回我々は、STMの設計を変更せずに、テラヘルツパルスをSTMの走査プローブ先端に結合することで、STMの接合バイアス電圧を変化させ、テラヘルツパルスによって誘起されたトンネル効果をSTMで実証している。このテラヘルツSTMは、実験室の環境条件でピコ秒未満(<500 fs)の時間分解能とナノメートル(2 nm)の撮像分解能を同時にもたらし、単一InAsナノドットの超高速キャリア捕獲を直接撮像できた。テラヘルツSTMは、超高速トンネル領域を利用して、原子レベルの分解能を持つ、ピコ秒未満の走査型プローブ顕微鏡法への扉を開く。