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単一光子散乱事象の量子もつれで強化された検出
Nature Photonics 7, 8 doi: 10.1038/nphoton.2013.172
単一粒子レベルでの光と物質の相互作用の検出能力は、科学技術の多くの領域でますます重要になっている。捕獲されたイオンのスペクトル線幅の狭い遷移での1個の光子の吸収や放出は1に近い確率で検出でき、超精密イオン時計の実現や、量子情報処理への応用が可能になった。しかし、光子1個の感度をスペクトル線幅の広い遷移に拡張することは難しかった。線幅の広い遷移では光子散乱が短時間で起こり、検出が難しいためである。今回我々は、線幅の広い光学遷移での単一光子の散乱を高感度で検出する技術を実証している。我々の方法では、光子を散乱する際にイオンが受け取る微小な反跳運動量の増幅に、もつれた状態を使う。この方法は、原子イオンや分子イオンの分光や量子情報処理に応用できると思われる。