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カーボンナノチューブにおける次元性の変化による励起子の増光
Nature Photonics 7, 9 doi: 10.1038/nphoton.2013.179
カーボンナノチューブは魅力的な一次元性を持つにもかかわらず、その発光量子収率は一次元性のために概して低く抑えられ、ナノチューブ発光デバイスの性能が制限されていた。今回我々は、カーボンナノチューブにおいて有効次元を一次元からゼロ次元へ人工的に変えることで、励起子(束縛された電子ホール対)の発光が著しく増強されることを報告する。酸素ドーピングによりゼロ次元に近い局所的な発光状態を生成したカーボンナノチューブにおける励起子ダイナミクスが、モデル系として研究された。我々は、ゼロ次元に近い状態に閉じ込められた励起子の発光量子収率が、固有の一次元励起子(一般的に約1%)よりも少なくとも1桁以上高くなり(約18%)、この発光増強が、無放射減衰経路が減っただけでなく、固有の一次元励起子以上に放射再結合確率が増えたためであることを見いだした。今回の研究成果を拡張すれば、室温動作可能な近赤外単一光子発生素子など、将来のナノスケール・フォトニックデバイスの実現につなげることができる。