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マルチスペクトルイメージングのための、カーボンナノチューブ内部のJ会合色素からの巨大ラマン散乱
Nature Photonics 8, 1 doi: 10.1038/nphoton.2013.309
ラマン分光法は、可視光を用いて分子振動指紋を得るので、さまざまな媒質における化学分析の強力な手段となる。しかし、高分解能光学イメージングの可能性は、ラマン効果が弱いという事実によって厳しく制限されている。今回我々は、単層カーボンナノチューブに内包された会合色素分子からの巨大ラマン散乱効果を発見したことを報告する。単層カーボンナノチューブ内部で高分極性J会合体として集合したα-セキシチオフェンやβ-カロテンなどの棒状色素について測定を行ったところ、(3±2)×10-21 cm2 sr-1という共鳴ラマン断面積が示された。この値は、最高の光学分解能で個々の会合体を検出するのに必要な断面積よりもかなり大きい。蛍光バックグラウンドや光退色がないため、この巨大ラマン効果によって、マルチスペクトル解析を用いたロバストな検出が可能なラマンイメージング向けに、機能化ナノプローブ標識のライブラリーの実現が可能になる。