単層カーボンナノチューブにおける三重項・三重項励起子ダイナミクス

半導体型単層カーボンナノチューブは、新たなオプトエレクトロニクスデバイスやフォトニクスデバイスの基本構成要素になるものとして期待されている。そうしたデバイスのエネルギー輸送、散逸、非線形光学特性は、一重項励起子と三重項励起子のダイナミクスに決定的に依存する。しかし、単層カーボンナノチューブでの三重項励起子については、光起電力や光電効果などの応用において重要であるにもかかわらず、ほとんど分かっていない。我々は、半導体型単層カーボンナノチューブのポンププローブ測定とスピン感受性光ルミネセンス測定を行い、三重項生成の量子収量（5 ± 2％）、三重項の寿命（30 ± 10 μ s）、三重項励起子の大きさ（0.65 nm）を決定できたことを報告する。三重項・三重項対消滅は、遅延蛍光を引き起こすことも分かった。ポンププローブシグナルと時間分解光ルミネセンスシグナルのべき乗則減衰は、一次元系での拡散律速対消滅の特徴であり、これによって三重項拡散定数を0.1 cm² s^-1と見積もることができた。今回の研究は、拡散性励起子運動の一次元閉じ込めによって、単層カーボンナノチューブにおける励起子対消滅が減少することを示唆している。