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低温動作光格子時計の開発
Nature Photonics 9, 3 doi: 10.1038/nphoton.2015.5
原子時計の精度は、原子分光の優れた再現性に依存しており、その再現性は、環境が原子に及ぼす擾乱を注意深く制御し除去することによって実現される。これまで、単独の原子時計では、10-18レベルの総合不確かさが達成されているが、10-18レベルでの2基の時計の比較は、まだ行われていなかった。今回我々は、黒体輻射によって生じる周波数変化に対処するため、低温環境で87Sr原子を調べる、光格子時計を実証している。黒体輻射によって生じる周波数変化は、系統的不確かさの主要な原因として残っていて、理論と実験の両面から盛んに研究され始めている。この低温時計の系統的不確かさは7.2×10-18であり、こうした低温時計を2基同時に動作させることによって速やかに評価された。1カ月間に11回行われた測定の後、2基の低温時計は2.0×10-18の精度で統計的に一致した。こうした時計の再現性は、10-18に近いレベルの精度の時計の開発に向けた大きな一歩であり、相対論的測地学の手段としてそのまま応用できる。