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量子カスケードレーザーのサブヘルツレベルの周波数安定化
Nature Photonics 9, 7 doi: 10.1038/nphoton.2015.93
分子を用いた高精度測定によって、大気物理学や星間物理学から、標準模型やそれを超える物理学まで、物理学のさまざまな分野においてより正確な知見が得られる可能性がある。そうした測定の大半は、吸収周波数測定、特に中間赤外域の「分子指紋」領域での吸収周波数測定であり、周波数が十分に制御された、線幅の狭いレーザーが必要になる。量子カスケードレーザーは、中間赤外域のあらゆる領域で広いスペクトル範囲をカバーするが、かなりの自走周波数の変動を示す。今回我々は、計測学の研究所から光ファイバーを通して送られた、超安定近赤外レーザーの非常に優れた安定性と精度を、光周波数コムを使って量子カスケードレーザーにコピーできることを実証する。得られた相対的安定性(2×10−15)と相対精度(10−14)は、これまでに量子カスケードレーザーによって実証された相対的安定性と相対精度をほぼ2桁上回る。この仕組みを使えば最先端の不確かさでの分子吸収周波数の測定が可能になり、この方法の超高精度分光への応用の可能性が確かめられた。