Review Article
マイクロRNA治療薬:がんと他の疾患の管理の新時代に向けて
Nature Reviews Drug Discovery 16, 3 doi: 10.1038/nrd.2016.246
マイクロRNA生物学の分野は、マイクロRNA(miRNA)が初めて発見されてから20年余りで大きく発展した。発生と疾患(特にがん)におけるmiRNAの役割に関する数々の知見が得られ、miRNAは、新しい治療法のためのツールと標的として注目を集めるようになった。また、数々の機能研究でmiRNAの調節異常が多くのがん症例の原因であることが確認され、腫瘍抑制因子やがん遺伝子(oncomiR)として作用するmiRNAが見つかっており、miRNA模倣体やmiRNAを標的とするmiRNA分子(antimiR)について前臨床開発段階で有望な結果が得られている。さらに、miRNAを標的とする数種類の治療薬が臨床開発段階に入っており、例えば、腫瘍抑制miRNAであるmiR-34の模倣体はがん治療薬として第I相臨床試験に、miR-122を標的とするantimiRは肝炎治療薬として第II相臨床試験に達している。本論文では、がんや他の疾患に関わるmiRNAの理解を深めるための研究の最近の進展について記述し、現在臨床適用されているmiRNA治療薬について概観する。それに加えて、最も効果的な治療薬候補を同定するという課題を論じ、miRNA治療薬の安全な選択的送達の実現に関する見通しも論じる。