Review Article
治療標的としての概日リズム
Nature Reviews Drug Discovery 20, 4 doi: 10.1038/s41573-020-00109-w
概日時計は、外部環境の変化と体内生理を統合する機能を果たすために、多様な生物で進化してきた。宿主は、概日時計によって、時間精度を身に付け、周囲環境に対してロバストに適応できるようになっている。時差ぼけ、交代勤務やその他の生活要因の結果として、概日リズムが乱れたり、ずれたりすると、健康に悪影響が生じ、がん、心血管疾患、代謝性疾患などの疾患のリスクが上昇する。現在、概日リズムの変調による負の影響については十分明らかになっているが、健康に良い効果をもたらすように生物学的時間を利用、修正する方法については十分に評価されていない。本総説では、概日システムについて最新の研究知見に基づいて説明し、概日シグナル伝達の変化を伴ういくつかの重要な疾患領域を取り上げる。また、環境と生活習慣による概日リズムの変化や、時間療法(治療指数を最大化するために意図的に投薬時間を最適化する治療法)のような概日時計を用いた治療戦略、時計の中心的な構成要素とその近傍に位置する調節因子を標的とする薬物についても論じる。研究、疾患モデル、臨床応用での有望な進展によって、概日医学の新時代に向けた協調的な取り組みが促進されると考えられる。