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p53を利用したがん治療の創薬:1つのタンパク質に数々の標的

Nature Reviews Drug Discovery 22, 2 doi: 10.1038/s41573-022-00571-8

TP53がん抑制遺伝子の変異は、がんにおいて非常に高頻度に見られる。そして、治療戦略として腫瘍におけるp53の機能を回復させる試みは、数十年前に始まった。しかし、このような医薬品開発プログラムの中で後期臨床試験に到達したものは非常に少なく、これまでのところ米国やヨーロッパでp53を利用した治療薬は承認されていない。この点については、核内転写因子の1つであるp53に薬剤標的分子の典型的な特徴がなく、そのためにp53を標的とする薬剤の創薬はできないと長い間見なされてきたことが理由として十分に考えられる。それでも、最近になって、p53を利用した治療薬に向けたいくつかの有望な方法が発表されている。例えば、かつての創薬戦略を改良した方法や創薬が困難とされた標的分子を利用して創薬を実現する新しい方法などである。p53を負の調節因子から保護したり、変異型p53タンパク質の機能を回復させたりする小分子薬に対する関心が高まっており、特定の種類のp53変異体に合わせた薬も登場している。これと並行して、遺伝子治療法とp53を利用した免疫療法にも新たな関心が寄せられている。しかし、重大な懸念事項への取り組みはこれからである。本総説では、p53機能を喪失しているがんを標的とする創薬活動を再評価し、臨床開発段階で直面した課題を論じる。

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