Review Article
遺伝性疾患のためのtRNA治療薬
Nature Reviews Drug Discovery 23, 2 doi: 10.1038/s41573-023-00829-9
転移RNA(tRNA)はタンパク質合成において重要な役割を担っており、近年、遺伝性疾患(主にmRNAの翻訳を変化させる変異に付随する遺伝性疾患)の治療へのtRNAの利用可能性が大きな注目を集めている。tRNAを、ナンセンス変異に付随するmRNAの翻訳の早期終結を読み飛ばすように操作すれば、タンパク質の合成および機能を回復させることができる。さらに、天然のtRNAを補充することで、tRNAの生合成および翻訳における機能に欠かせないタンパク質のミスセンス変異の影響を打ち消すことができる。本総説では、in vivoで高い活性と安全性を持ったtRNA治療薬の開発における進歩を紹介し、単回あるいは長期治療手法のためのさまざまな製剤アプローチについて論じる。tRNA治療薬の分野はまだ初期段階にあり、in vivoでのtRNAの有効性、安定性、組織特異的な指向性を持った送達システム、安全かつ効率的な製造に関連した一連の課題に取り組む必要がある。