中耳炎
Otitis media
2016年9月8日 Nature Reviews Disease Primers Article number: 16063 (2016) doi: 10.1038/nrdp.2016.63
中耳炎(OM)、または中耳の炎症は、急性中耳炎(AOM)、滲出性中耳炎[(OME)、別名:グルーイヤー]、慢性化膿性中耳炎(CSOM)などの様々な疾患を包括している。OMは世界で幼児に最もよく見られる。OMは合併症なしに自然治癒するが、難聴や生涯続く後遺症の原因になる場合がある。発展途上国では、CSOMが難聴の主な原因になっている。OMは細菌とウイルスのいずれもが原因になり得る。「風邪」に罹るとウイルスが耳管を上行して中耳に到達することで、鼻咽頭に生息していた中耳炎の原因菌が活性化する状態が整えられる。AOMでは急性耳痛や鼓膜の腫脹など、またOMEでは難聴などの典型的な兆候と症状から診断が行われる。診断には、(気密)耳鏡検査、鼓膜聴力検査および聴力検査などが行われる。AOM治療の中心は耳痛や発熱への対症療法であり、重症、持続性または反復性の感染のある小児には抗菌薬が投与される。OMEの管理では、ほとんどの場合に厳重な経過観察が行われるが、慢性滲出液および難聴、発育遅延または学習困難のある小児では、主に鼓膜換気チューブ留置が行われる。今後、OMEの管理における難聴症状を緩和する補聴器の役割について検討する必要がある。再発の予防を目的とした反復性AOMの一般的な手術には換気チューブの挿入やアデノイド切除が行われるが、これらの有効性については現在も明らかになっていない。この10年間でのOM発症率の低下、正確な診断および抗菌薬の慎重な使用を推進する臨床ガイドラインの実施ならびに肺炎球菌結合型ワクチンに関する報告が行われてはいるが、OMは現在でも高所得国の医療相談、抗菌薬処方および外科手術の主な原因である。
PrimeView
中耳炎(OM)または中耳の炎症は、急性OM、滲出液を伴うOM、慢性化膿性中耳炎などを含む包括的な疾患名である。このPrimeViewでは、種々の診断検査も含めて主に臨床兆候と症状に基づくOMの診断法について取りまとめる。
本Primerの図解サマリー