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2013年10月号Volume 10 Number 10
間葉系幹細胞の国際標準を!
ネジから液晶ディスプレイの規格まで、大半の工業製品には「国際標準」という詳細な国際的取り決めが存在する。このルールに従っていれば、どこの誰が作ったものでも代替利用できる。これに近い形で「間葉系幹細胞」の国際標準を決めようという動きが、米国立衛生研究所(NIH)の主導で始まった。間葉系幹細胞からは、骨細胞・心筋細胞・脂肪細胞などが作れ、最近では、グリア細胞や幹細胞にも誘導できることがわかり、再生医療への期待が高まっている。ところがその実体は定義さえ怪しい状態にあって、各研究者が勝手に主張しているのに近い。この混乱状況を解決するため、作業部会は当面、基準となる参照株を1株以上樹立したいと考えているという。
Editorials
レーザー通信による宇宙探査機からのデータ伝送
宇宙船からのデータ伝送速度の向上が求められており、レーザー通信技術への期待が高まっている。ただ、雲を避けてどう伝送するかなど、克服しなければならない課題が残っている。
Research Highlights
News
ナノ粒子温度計で生細胞の温度を測る
ダイヤモンド結晶における量子効果を利用して、微小なナノ粒子温度計が作製された。 これを生細胞内に導入すると、1000分の数ケルビンという高感度で、 細胞の温度変化をマッピングできる。
ネアンデルタール人の皮革加工用道具
ネアンデルタール人は、 高級ハンドバッグの製造に使われている皮革加工用道具を作っていたようだ。
弱体化マラリア原虫から作成したワクチンが効いた!?
放射線照射された蚊から採取した原虫を使用するマラリアワクチンが、 防除率100%を達成したとの報告がなされた。
地球温暖化で紛争が増える?
気温や降水量が平均から極端にはずれることが、不和や戦争の増加と関連付けられた。
分解能の限界が迫る電子顕微鏡
電子顕微鏡の分解能向上を妨げるノイズが、装置の仕組みではなく、 材料そのものに起因することが分かった。その他の要因も含め、分解能の改善は限界に近づきつつあるようだ。
米国の小惑星捕獲計画
宇宙の小さな岩(小惑星)を捕まえて月の近くまで運び、宇宙飛行士が訪れて調べようという計画が進んでいる。しかし、候補になる岩の選定など、計画の前途には難題が多い。
人間は、ものを投げる動物である
スポーツ選手がものを投げる動作を高速度撮影して調べたところ、カタパルト(投石機)のような機構で 肩と胴にエネルギーを蓄えていることが明らかになった。
EUのバイオ燃料政策が変わる
EUは、化石燃料に代わる輸送用燃料として積極的に導入を進めてきた バイオ燃料について、使用を抑制する方向へと舵を切りつつある。
特許の呪縛を超える試み
特に小さなバイオテクノロジー企業にとって、特許を含む現在の知的財産の状況は悪夢でしかない。この現状を変えるべく、自社の特許技術をオープンソースとして無償公開する大手企業が現れた。
間葉系幹細胞の混乱を解消する標準化
間葉系幹細胞の評価方法についてはバラバラで、その定義すら怪しい。 こうした混乱状態を解決するため、 きちんとした標準を作成する作業部会が設置された。
News Features
脳科学の世紀
米国と欧州が相次いで、数千億円の資金を投入して脳が働く仕組みを解明する構想を打ち出した。しかし、その実現に必要な技術はまだ十分に整っていないのが現状だ。
効く薬がない「究極の耐性菌」の恐怖
科学や医学の進歩と経済的繁栄や社会保障制度などのおかげで、人類は多くの感染症を実際に克服してきた。 それゆえ、災いが不可避的にやってくるというような黙示録的な表現を保健当局者が使うことはない。ところが、今最後の砦となっている強力な「カルバペネム系抗生物質」に対して、一部の細菌が耐性を獲得し始めており、恐怖を感じながらの監視体制がとられている。
Turning Point
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夢ある「探検家」への分かれ道
2013年夏、有人潜水調査船「しんかい6500」に乗り込み、水深5000mの海底から熱水域の探査現場をWeb中継した高井 研氏。深海、地殻、宇宙と高井氏の探検フィールドは広いが、そうした極限環境にすむ微生物を調べる彼の研究はどこから始まった?
Japanese Author
脳損傷時のニューロン保護作用とグリア細胞のカルシウム濃度
受精の際、卵に精子が1つ入ると、カルシウムイオンの波が生じて2つ目が入れないようになる。この例のように、カルシウムは、さまざまな生命現象の制御シグナルとして機能している。このほど、東京大学大学院医学系研究科の飯野正光教授らは、脳が傷害を受けた際にも、カルシウムシグナルが発生して、グリア細胞がニューロンの保護活動を開始するらしいことを見いだした。
News & Views
70万年前のウマのゲノムを解読
約70万年前のウマの骨が永久凍土から回収され、そこからゲノムが解読された。 その他の時代のウマのゲノムも解読され、それらを通して、ウマの進化史の概要が明らかになった。 一方、DNAの残存期間についても興味深い事実がもたらされ、100万年前の試料からでもDNAが回収可能らしいことが分かった。
散開星団の中の惑星形成プロセス
散開星団の中で2つの惑星が発見され、惑星形成のプロセスが強靭なものであることが明らかになった。 なぜなら、散開星団の密度が高かった初期には、恒星どうしの接近や近くでの超新星爆発など、惑星系の破壊を招きかねない出来事が起こったはずだが、それに耐えて今まで生き延びている惑星が、実際に見つかったからだ。
News Scan
昆虫が草地の炭素吸収を増やす
予想外に複雑な仕組みが存在するらしい
3D印刷で人工気管
再生用の埋め込み器具が実用化