【海洋地質学】新しい種類の熱水系が見つかる
Nature Communications
2015年12月23日
Marine geology: A new class of hydrothermal system
地熱によって加熱された液体が深海底から噴出している熱水噴出孔系について、これまでに知られていなかった種類のものが見つかったことを報告する論文が、今週掲載される。この新しい種類の熱水噴出孔系から噴出する高温で鉱物を豊富に含む液体は、他の熱水噴出孔系から噴出する液体とは化学組成が異なり、全球熱収支の計算方法に影響を与える可能性があると考えられている。
熱水噴出孔は、通常、地球のテクトニックプレートが分離拡大する領域に形成する。こうした地点では、循環している海水が海底下のマグマによって加熱され、酸性度を増し、周辺の岩石から金属が浸出する。海底の熱水噴出孔(「チムニー」)から噴出した熱水が冷たい海水とぶつかると、こうした金属が再び堆積する。
今回、Matthew Hodgkinsonたちは、海洋調査船「ジェームズ・クック」に乗船していた科学者と乗組員が2010年にカリブ海で発見したフォンダム熱水域で採取された試料の分析を行った。Hodgkinsonたちは、フォンダム熱水域に生息する動物群集が大西洋中央海嶺の動物群集に似ているが、フォンダム熱水域に存在する鉱物と化学物質は他の既知の熱水噴出孔のものと大きく異なっており、チムニーとマウンド(隆起地形)のほとんどが通常見られる硫化鉱物ではなく、滑石でできていることを明らかにした。また、フォンダム熱水域の熱流束が約500メガワットと非常に高エネルギーで、この地点で予想されるレベルをかなり上回っている。その理由としては、フォンダム熱水域が位置しているのが、分離拡大している2つのプレートの間ではなく、拡大しているプレートの側面であることが挙がっている。
フォンダム熱水域の位置が通常と異なっていることからは、これ以外にも類似の熱水域が存在しており、それらが見落とされている可能性のあることが示唆されている。こうした新種の熱水噴出孔は、地球内部と海洋の間での化学物質と熱の交換を駆動する重要な因子である可能性があり、海洋に対する熱水噴出孔の影響に関する現在の全球的評価に影響することも考えられる。
doi: 10.1038/ncomms10150
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