環境:各国の森林破壊フットプリントを明らかにすることで熱帯林への脅威の高まりが見えてくる
Nature Ecology & Evolution
2021年3月30日
Environment: Mapping the deforestation footprint of nations reveals growing threat to tropical forests
富裕国での牛肉、大豆、コーヒー、ココア、パーム油、木材などの商品の消費が、危機に瀕している熱帯バイオームの森林破壊と直接関連していることを明らかにした論文が、Nature Ecology & Evolution に掲載される。
農林産物に対する世界的な需要の増加が、世界各地で森林破壊を引き起こしている。これまでの研究では、世界のサプライチェーンと森林破壊の関連が調べられてきたが、その多くは、地域レベルで行われたり特定の商品のみに着目して行われたりしたものだった。
今回、総合地球環境学研究所の金本圭一朗(かねもと・けいいちろう)とNguyen Hoangは、森林の消失とその駆動要因に関して過去に公表された情報を、2001~2015年の1万5000の産業部門にわたる国内交易関係と国際交易関係の世界的データベースと組み合わせた。著者たちは、これらのデータを用いて、各国の国内外の森林破壊フットプリントを、国民の消費に基づいて定量化した。
その結果、多くの国では国内では森林の純増が伸びているが、こうした国の森林破壊フットプリント(主に熱帯林において)は物品の輸入によって拡大していることが明らかになった。G7各国(米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本)での消費は、平均で1人当たり毎年3.9本の高木の減少を引き起こしていた。具体的な商品の森林破壊パターンを調べると、ドイツでのココアの消費はコートジボワールとガーナの森林に極めて大きなリスクを生じており、タンザニアの沿岸地域の森林破壊は日本の農産物需要と関連していることが分かった。また著者たちは、森林破壊の駆動要因は、国の内部でも異なっている可能性があることを実証している。すなわち、ベトナムの中央高原の森林破壊は、主に米国、ドイツ、イタリアでのコーヒーの消費によって引き起こされているのに対し、ベトナム北部の森林破壊は、主に中国、韓国、日本への木材輸出と関連していた。
著者たちは、森林を消滅から守るための規制の改善や科学に基づく介入を行うためには、国際貿易と森林破壊との具体的な関連性を理解することが必要であると結論付けている。
doi: 10.1038/s41559-021-01417-z
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