注目の論文
【気象学】大気の川による洪水の早期予報
Nature Communications
2014年11月12日
Meteorology: Early flood forecasting with atmospheric rivers
大規模な洪水事象を予測するツールとして、水蒸気の輸送のほうが降水量よりも優れているという報告が、今週掲載される。この新知見は、英国やその他の欧州諸国において、洪水警報を最大3日早く発令できる可能性を示している。
水蒸気の輸送とは、大気中を大きな高湿度領域が巨大な河川のように移動することを指す。この大気の川は、北大西洋を横切ってヨーロッパに向かう低気圧と関連しており、この川に含まれる水蒸気の一部が豪雨となる。豪雨は毎日のように起こるため、予報が困難な場合がある一方で、大気の川の時間スケールはそれよりも長いため、洪水予報に用いる予測ツールとして水蒸気輸送の方が優れている可能性のあることが示唆されていた。
今回、David Laversたちは、ヨーロッパ中期気象予報センターのアンサンブル予報システムを用い、この説についての検証を行った。Laversたちは、水蒸気輸送と降水量の予測能力を比較評価する際に、2013年から2014年にまたがる冬の雨季における豪雨とその後の洪水に注目し、イングランド、ドイツとスペインの一部を含むヨーロッパ地域で、水蒸気輸送を用いることによって、従来より3日早く予報できるようになることを明らかにした。
今後、詳細な研究によりこの警報システムの誤報率を評価する必要があるにせよ、降水量に代わる水蒸気輸送の利用は、冬季ヨーロッパにおける極端な水文現象に対する警戒心を高め、ひいては準備態勢を充実させるうえで有望な手段であることが明らかになった。
doi: 10.1038/ncomms6382
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