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【進化】クジラの腸内微生物叢は食餌と進化歴によって形づくられている

Nature Communications

2015年9月23日

Evolution: Diet and evolutionary history shape the whale microbiome

Nature Communications

魚類と甲殻類を餌とするヒゲクジラ類の腸内微生物叢が陸生草食動物の腸内微生物叢に類似しているという報告が、今週掲載される。この新知見は、哺乳類の腸内に生息する微生物群集が形づくられる際に食餌と進化歴の両方が寄与しているとする学説を裏付けている。

食餌は、哺乳類の腸内微生物叢の構成を決める大きな要因の1つだ。ところが、タケを餌とするジャイアントパンダなど一部の動物の腸内微生物叢の全体的な構成は、その近縁種(クマ)と似ているが、クマの食餌はジャイアントパンダの食餌とは全く異なっている。今回、Jon Sanders、Annabel Beichman、Peter Girguisたちは、ヒゲクジラ類についても同じことがいえるかを調べた。ヒゲクジラ類は、ウシやカバと近縁の陸生草食動物の祖先から進化した海生肉食動物だ。

Sandersたちは、ヒゲクジラ類(3種12頭)の糞便試料に含まれる微生物の遺伝子解析を行った。そして、この解析結果をさまざまな食餌をとる海生哺乳類と陸生哺乳類から得た類似のデータと比較した。その結果、ヒゲクジラ類の全体的な微生物叢の構成と機能的能力が、近縁の陸生草食動物と似ていることが明らかになった。しかし、特定の微生物の代謝経路は、陸生肉食動物との類似性が高かった。

今回の研究は、腸内微生物叢の構成を決定する食餌性要因と進化的要因の複雑な相互作用を解明する上で役立つ。Sandersたちは、ヒゲクジラ類の場合、進化的近縁関係と腸内微生物叢の構成の相関は消化管の構造による制約を反映したものである可能性があるという考え方を提示している。ヒゲクジラ類とその陸生の近縁種の両方が、発酵室として機能する多室構造の前腸を有しているからだ。

doi: 10.1038/ncomms9285

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