Review

トランスジェニック動物由来のヒト抗体

Nature Biotechnology 23, 9 doi: 10.1038/nbt1135

実験用マウスを用いれば、親和性および特異性の高い多様なモノクローナル抗体(mAb)が容易に得られる。しかし、治療薬としての齧歯類抗体の開発では、分子が必然的にもっている免疫原性が障害となってきた。in vivoでの治療に用いる低免疫原性のmAbを得るために探究されているある技術では、各種ヒト抗体遺伝子配列を発現するトランスジェニックマウスが用いられている。現在この技術は、新たな治療用mAbの開発を目指す製薬企業およびバイオ企業13社以上が利用しており、基幹的臨床試験中の数種類を含め、目下臨床試験中の少なくとも33種類の薬物にはトランスジェニックマウスからとったヒト配列がコードする可変領域が含まれている。こうした薬物の試験で得られつつあるデータからは、分子の安全性および有効性に関する問題をいち早くうかがい知ることができる。しかし、この技術が薬物探索手段として実用的なものであることが完全に確認されるためには、実際に製品が承認されることが必要であり、これは現時点で最大の難関である。将来的にこの技術は齧歯類以外に拡張され、トランスジェニック家畜動物にヒト配列ポリクローナル血清を直接産生させて製造することができるようになると考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度