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ヒトの複製開始点による遺伝子サイレンシングの阻害

Nature Biotechnology 24, 5 doi: 10.1038/nbt1202

転写サイレンシングはヒトの遺伝子治療に対する大きな障害のひとつであり、複製のS期後期に認められることが多い。本論文ではDNA複製を開始させるDNA配列(複製開始点)によって転写サイレンシングおよび複製遅延が阻害されることを示す。サイレンシングを受けやすい導入遺伝子が複製開始点を含む場合は、転写サイレンシングが起こらず早期に複製が起き、真正染色質に特有のヒストンアセチル化パターンが維持されていた。複製を開始することができない変異型複製開始点を同じ導入遺伝子の同じ位置に挿入すると、遺伝子サイレンシングが阻害されず複製が遅延した。今回の知見から、複製開始点は、DNA複製の開始を促進して遺伝子サイレンシングに影響を及ぼす後成的な染色質変化を生ずることが示唆される。遺伝子治療ベクターに機能的な複製開始点を組み込むことは遺伝子発現パターンを安定化させる手段となる可能性がある。

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