Letter 哺乳類細胞が自己と非自己の二本鎖RNAを区別するための構造的基盤 2006年5月1日 Nature Biotechnology 24, 5 doi: 10.1038/nbt1205 低分子干渉RNA(siRNA)が引き起こす非特異的な作用は、RNA干渉(RNAi)によって遺伝子発現を特異的に抑制するときの障害となっている。こうした非特異的作用の基礎を明らかにする目的で、哺乳類の二本鎖RNA(dsRNA)が活性化するシグナル伝達経路に化学合成siRNAが及ぼす作用を解析した。長さ21〜27ヌクレオチドのsiRNAは、ダイサー産物の特徴である2ヌクレオチドの3'突出末端を欠く場合にインターフェロン系を活性化した。siRNAの認識がRNAヘリカーゼRIG-Iを介したものであること、また3'突出末端の存在によってRIG-IがdsRNA基質を巻き戻して転写因子IRF-3に至る下流のシグナル伝達を活性化する能力が抑えられることがわかった。この結果は、内因性のダイサー産物であるマイクロRNAと、ウイルス複製時の副産物のような非自己dsRNAとを区別するための構造的基盤を示唆している。以上の知見から、非特異的作用を回避するsiRNAや、ウイルス感染またはがんにsiRNAを利用する治療法の有効性を高めるためのバイスタンダー効果を誘導するsiRNAの合理的な設計が可能になると考えられる。 Full text PDF 目次へ戻る